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2015年5月7日木曜日

奇跡という呪いを受けた人々へ

 男は机にある大小様々な球体を一つ一つ持ち上げ、万華鏡のように回転させて、観察し続けていた。何が起ころうと嬉しそうにしている。表情はもちろん変わっていた。泣き喚いたり、思いっきり爆笑したりする。けれど、否定はせず、終始怒りはせず、優しい雰囲気を漂わせていた。
 けれど、それは誰にも見られない。男しかこの空間にはいない。あるのは球体と机と男だけだ。

≪それでも男は語り掛けるような口調で、話しかけ始めた≫

 
 球体の一つ一つに一人だけある特殊な力を持っている。何度でも時を自在に繰り返すことができる力だ。

 さて、話を戻そう。奴らは、祝福を受けたと喜んだ。そして、繰り返し、不満な事象を失くそうとした。盲目に前だけを見つめていた。しかし、どうだろう。振り返ってみれば、屍が転がっていた。天災や事故、殺人。それらの事象を直視してしまった。もう察しただろう。奴らは強いられることとなった。


≪男は机の上で一番大きな球体を両手で包んだ≫


 あるものは楽園を作ろうとしている。

「呪いだよ。いつでも決断を覆し、修正することが可能な能力があるのだから、常に正解で、尚且つ最善でなくてはならない。総べての選択を見つめ直し、悩み続け、今までの積みかさねをなかったことにしても、万物を最善にしなくてはならない」

 今でこそこんなことを言っているが、その考えに至るまで数えきれないほど繰り返し続けた。
 そいつは自分本位に能力を使っていたけれど、ある日、事故や天災、殺人、理不尽な現象を知ってから、覆すことが出来てしまうのが、繰り返すという事だと理解する。 
 これは責務だと。知らぬふりは責任放棄になると考えた。
 逃げ続ける事は難しかった。いつでもやり直すことが可能だから。逃げるという選択さえもいつでも変えられる。救えるのに行動しなかった、と責め、囁き続けられる。そして何より、振り返らずにいることが出来なかった。
 結果、奴は何度も繰り返すことを選択した。
 死は身近にある。誰かが死ぬのは当たり前だ。それが自分の大切な人間にいつ訪れたって不思議ではない。
 その度に戻る。そうすると、見捨てた人々は生きている。また見捨てるのか、救うのかを選ばなくてはならない。
 しかし、これはあくまで副次的なものだったわけだ。
 苦悩はここからようやく始まる。

「仮に、知りうる全ての不幸を刈ろうとしたとしても、取りこぼしというものがある。災害や戦争というものが起これば、全てを救うことはできない。しかし、それは最善ではない。なら――諦めることはできない」

 奴は歩み続けた。
 ありとあらゆる知識を習得し、鍛錬し、それ等を持ってして、また繰り返すことで不可能を可能にできるはずだ、と。
 制限を超えれば、当然、前提条件も変わる。
 今、不可能なことでも未来なら?
 その可能性を知ってしまったわけだ

「何千、何億、と繰り返せば、永遠と表現して差し支えない時を巻き戻せば、できないことなんて――ないはずだ」

 総べての望みが叶う世界。誰もが幸福であるために、全てを救うという理想を叶えるようと、あいつは何度も、何度も何度も、繰り返した。そして、可能性に打ちのめされた。

 しかし、男は歩き続けている。だけど、繰り返すことは止めた。その理由はとっても単純――。

『世界は可能性に、選択肢に充ちている。選択肢に愛し縋って、その未来に打ちのめされ、それでも尚、俺たちは可能性を捨てられない』

≪おっと、観測に熱が入ってしまった、と男は呟いた。手を挙げてお道化てみせるが誰もいない空間では反応はない≫
≪手に持っていた球体よりも小さな、指で挟める程度の大きさのものを慎重に手に取る。また笑いながら語り掛け始めた≫

 経緯は似ているが、正反対の道を歩み続けている奴もいる。
 愛するものたちのためだけに繰り返す。こいつはずっと飽きずにやってやがる。
 救いの対象が違うとこうも違うのかと呆れてしまうよ。

≪男は馬鹿にしたように笑う。愉快気なのは口元だけで、目は愛おしそうに小さな球体を眺めていた≫



こんな頭緩い趣旨のループものをノベルゲームとして作りますので、協力していただける方はぜひコンタクトをとってください!

 
 

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